TCFD提言に基づく開示
TCFDへの賛同と同提言に基づく情報開示
当社グループでは、気候変動への対応は重要な経営課題として認識しており、サステナビリティに関わる重要課題(マテリアリティ)の一つに「脱炭素社会の実現と環境に配慮した循環型社会への貢献」を掲げております。これらの課題解決のため、特に温室効果ガス(GHG)排出量の削減、具体的には再生可能エネルギーへの転換や、環境対応施設・車両の導入、モーダルシフトの推進等、事業を通じ環境負荷低減化を図るためのサステナビリティ活動に取り組んでおります。
今後も事業を通じた活動を強化・推進していくため、2023年6月19日にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、同提言の枠組みに基づく4項目「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の情報開示を行いました。この度その取り組みの範囲を、当社単体から国内・海外子会社を含むグループ全体に拡大することと致しました。
なお、特定した気候変動リスク・機会、削減目標等については引き続き定期的に見直しを行うとともに、気候変動情報を適宜開示するなど情報開示の充実化に努めます。また、GHG排出量削減の対応策を実施することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指してまいります。
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TCFD: 企業等に対し、気候変動関連リスクおよび機会や取り組みを具体的に開示することを推奨する国際的枠組み。
開示情報のより詳しい内容は、下記をご参照ください
ガバナンス
当社グループでは、気候変動リスクは重要リスクの一つであるとともに、その対応は経営上の重要課題の一つであると認識しており、気候変動に組織的に対応するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。
本委員会は経営会議の諮問機関として、気候変動関連リスク及び機会の識別・評価・管理を行うとともに、CO2を始めとする温室効果ガス(GHG)排出量の削減等の目標設定や施策の計画、立案、進捗管理を行い、経営会議への答申を行います。
また、その結果については、経営会議から取締役会へ報告され、重要事項については取締役会での決議を行うなど実効性のある体制を構築しています。
- ■取締役会:
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経営会議からの報告を通じ、気候変動に関するリスク・機会の識別・評価や関連指標・目標、施策の進捗状況について監督し、重要事項については決議を行います。
- ■経営会議:
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取締役会による監督の下、サステナビリティ委員会への諮問を行い、答申された内容についての審議と取締役会への報告を行います。
- ■サステナビリティ委員会:
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経営会議の諮問機関として、気候変動に関するリスク・機会の評価、識別、管理や関連指標・目標の設定、対応策等を審議し経営会議に答申します。
- ■サステナビリティ推進室:
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気候変動関連リスク・機会の特定や関連指標・目標の設定、対応策等について、サステナビリティ委員会への報告を行います。また、同委員会の事務局となります。
戦略
リスク・機会の特定とシナリオ分析
気候変動が当社グループの事業活動に中⾧期的に影響を与えるリスク・機会を特定するとともに、産業革命前の世界の平均からの気温上昇を「1.5℃」「4℃」の場合の世界観を想定し、リスク・機会の対応策の検討と2030年度時点における財務影響度の分析を行いました。想定するシナリオ別の世界観は下記の通りです。
- 世界観(2030年時点)
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1.5℃シナリオでは、2℃未満シナリオよりもさらに厳しい脱炭素に関する規制、取り組みが拡大することで移行リスクが増大し、一方で物理リスクは抑制される
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EV,FCVの更なる普及が進み、乗用車では2℃未満シナリオの約2倍、トラックでは約4倍のシェア拡大が想定される。石油需要が2030年まで継続的に減少する
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2℃未満シナリオと比較して更なる水素活用が進み、2022-2030年の間に2℃未満シナリオの約3倍の投資が行われ、再エネ投入とCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)普及に伴い低価格での水素供給が実現する
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2℃未満シナリオよりも規制が強化され、エネルギー以外の鉄、セメント、プラスチック等の産業セクターでの排出削減の取り組みが加速する
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- 主な参照先
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WEO2022(NZE)
IPCC AR6 SSP1-1.9
- 世界観(2030年時点)
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気候変動による物理的な被害が事業に影響を及ぼす(主として物理リスク)
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化石燃料に依存した経済が継続し、化石燃料価格が上昇する
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気候変動に関する規制は現在施行されているものに留まり、かつ完全には実施されない
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他シナリオとの気温差が表れ始め、異常気象による自然災害の頻度、度合が上昇するほか、労働環境の悪化が生じる
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- 主な参照先
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WEO2022(STEPS)
IPCC AR5 RCP8.5
IPCC AR6 SSP5-8.5 等
リスクと対応策
特定されたリスクとシナリオ分析による財務影響度は下記の通りです。
大分類 | 中分類 | 特定されたリスク | 影響度 | 時間軸 | 影響 | 対応策 | |
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1.5℃ | 4℃ | ||||||
移行 | 政策と法 | 炭素税導入によるコスト増加 | 大 | 大 | 中 | GHG排出に課される炭素税導入による支払いコスト増加 |
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低炭素車両への転換に伴う車両購入コストの増加 | 大 | 大 | 中 | EV、FCV等の高額な低炭素車両への買い替えによる、購入コスト増加 |
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代替フロン等冷媒規制の強化による設備投資コストの増加 | 小 | 小 | 中 | 代替フロンを使用する冷蔵・冷凍機器の規制強化による、自然冷媒機器への更新に伴うコスト増加 |
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技術評判 | 低炭素輸送を重視する顧客への対応不足による売上減少 | 大 | 小 | 中 | 顧客の環境配慮意識の高まりやGHG排出削減取り組み強化に伴う低炭素輸送の需要増加への対応不足による、顧客喪失、売上減少 |
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物理 | 急性 | 風水害の激甚化による施設損壊・損害賠償コストの増加 | 中 | 大 | 短 | 気温上昇に伴う風水害の発生頻度増加により、倉庫などの設備や委託貨物への損害が発生し、修繕コスト、損害賠償コストが発生 |
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海面上昇による臨海エリア物流拠点の修繕コスト増加 | 大 | 大 | 中 | 海面水位上昇による高潮に伴う浸水の発生確率が高まり、倉庫や営業所の建物・設備損壊による修繕コストが発生 |
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慢性 | 気温上昇による作業効率低下、および対策(冷房等)費用増加 | 小 | 小 | 中 | 気温上昇に伴う従業員の作業効率と生産性の低下、およびその対応のための空調コストが増加する |
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- 時間軸
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短期:2026年度(第7次中期経営計画終了年度)
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中期:2030年度
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長期:2050年度
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- 財務影響度
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定性的・定量的な観点に基づく財務影響を 大・中・小 にて評価
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(株)日新及び全ての連結子会社の活動量等を基に評価。一部2℃未満のシナリオも併用
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機会と対応策
特定された機会とシナリオ分析による財務影響度は下記の通りです。
大分類 | 中分類 | 特定されたリスク | 影響度 | 時間軸 | 影響 | 対応策 | |
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1.5℃ | 4℃ | ||||||
機会 | 資源効率性 | 車両燃費向上による燃料コストの削減 | 大 | 中 | 中 | EV・FCVの導入で保有燃費が向上することによる燃料コスト削減 |
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新たな輸送手段の導入による物流の効率化 | 中 | 小 | 中 | エネルギー効率向上や低排出物流サービス拡大に伴うDX導入が作業効率向上や保有車両等の設備削減によるコスト削減に寄与する |
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DX・IoTを活用した新サービス提供による売上増加 | 大 | 小 | 中 | DX・IoT導入によるエネルギー効率向上や、低排出物流サービス拡大が環境配慮意識の高い顧客に選ばれることによる売上増加 |
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エネルギー源 | 環境配慮サービス導入による顧客獲得・売上増加 | 大 | 小 | 中 | より低排出な輸送手段、燃料を使用する環境配慮サービスが環境配慮意識の高い顧客に選ばれることによる売上増加 |
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市場 | EV、水素燃料等への新たな事業展開による収益増加 | 大 | 大 | 短 | EVや水素関連事業へ参入・拡大し、新規市場開拓を実現することによる売上増加 |
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レジリエンス | 災害発生時の物流機能維持・物資輸送による顧客からの信頼増加に伴う売上増加 | 小 | 中 | 中 | 災害時の被害を最小限に留めるための対策・連携を強化し、顧客から信頼を獲得することによる売上増加 |
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- 時間軸
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短期:2026年度第7次中期経営計画終了年度
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中期:2030年度
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長期:2050年度
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- 財務影響度
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定性的・定量的な観点に基づく財務影響を大・中・小にて評価
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(株)日新及び全ての連結子会社の活動量等を基に評価。一部2℃未満のシナリオも併用
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リスク管理
当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼすリスクを全社的観点で洗い出し適切な対応を行うため、リスクマネジメント規則に基づきリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会の委員長はリスク管理担当の役付執行役員が務め、代表取締役社長がグループのリスクマネジメントの最高責任者を務めています。特に気候変動関連リスクについては、サステナビリティ委員会での評価に加え、リスク管理委員会にて全社的観点で評価し、モニタリングを行います。
なお、リスク管理委員会で重要リスクであると特定されたリスクについては、経営会議、取締役会での議論・承認を経てグループの重要リスクとして認識され、対応策の検討・実施を行っております。
指標および目標
指標
当社グループ連結 温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1、Scope2)
目標
年率2.7%削減(2022年度基準で2030年度までに21.6%削減)
2050年度カーボンニュートラルの実現を目指す
Scope1
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EV,FCV等の環境性能の高い車両への更新
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バイオ燃料等への代替
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冷凍・冷蔵設備のフロン冷媒を自然冷媒へ切り替え
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共同輸送、モーダルシフトの推進による自社車両の効率運用
Scope2
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再生可能エネルギー電力導入拠点の拡大
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太陽光発電等の自然由来エネルギーの導入
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施設照明LED化等の省エネ化の促進
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DX導入によるエネルギー使用量削減
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非化石証書の購入
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