パーパスストーリー02

混乱の中、
はるか異国に日本の技術を届ける。
ODAの完遂で
人々の未来に橋をかける。

2024年4月1日

日新ではODA(※)の輸送支援も行っています。輸送先の多くは新興国で、難題に直面することも少なくありません。実際に中央アジアのキルギス共和国への輸送で、まさかのピンチに見舞われた担当者が、それをどう乗り切って輸送を完遂したのかを語ります。

  • ODA:政府および政府の実施機関が開発途上国に行う、資金協力や技術協力。Official Development Assistanceの略。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア鉄道を使った輸送が不可能に

「キルギスでの橋梁工事の輸送のお手伝いをさせてほしい」。

竹中土木さまへそんな問い合わせをしたのは、2021年のことでした。キルギスで橋梁の架け替え工事をするODA事業を受注され、当社も見積に参加することになりました。ロシアをはじめ中央アジア地域への輸送経験がある私が担当になりましたが、ロシアのウクライナ侵攻により、当初予定していたロシア極東港からシベリア鉄道を使うルートが遮断されてしまいました。一方で、工事期間はもう決まっています。

そこで当社は、ロシアを経由しない代替ルートをご提案しました。輸送ルートとあわせて輸送工程ごとの具体的な日数を提案したのは、当社だけだったようです。この案を採用いただき、当社が輸送を請け負うことになりました。ただ、世界情勢の混乱もあり、いつにも増してハードなミッションとなったのでした。

Profile

グローバルロジスティクス営業部 第五課 

小川 淳市

2010年入社。2016年よりプラント貨物を扱う現部署に配属。主に工場設備や海外のインフラ工事などに使われる、重機や建築資材の輸出に携わる。とくにロシアや中央アジア地域への輸送において豊富な経験がある。

輸送ルート

今回は主要な貨物を日本から中国の連雲港へコンテナ輸送し、そこから中国鉄道に接続するルートを採りましたが、まずは鉄道への接続が非常に難儀でした。というのも、ロシアの鉄道が使えなくなり、中国鉄道に需要が集中していたからです。接続には、通常だと2週間程度で済むところが、当時は下手すると3~4ヶ月はかかってしまう可能性が有りました。それでは、工期にとても収まりません。

そこで私たちは、中国の当社現地法人や関係省庁に働きかけるなど、考えつく限りの手を尽くします。結果、関係各所のご尽力で、なんとか3週間で接続することが叶いました。その後貨物は、鉄道で中国大陸を横断し、カザフスタンを経由してようやくキルギスへ到着。

なお今回の工事は、現地では入手できない特殊な重機も複数必要で、それを日本から運ぶミッションもありました。こうした日本のODA事業では、日本独自の高度な工法が活用されることが少なくなく、それには特殊な重機が必要だからです。

ただし40トンもある大型の重機を特殊なコンテナで運ぶため、鉄道には載せられず、中国に入って以降は4,000キロ以上をトレーラーで運ばねばなりません。また、重量のあるものは、橋を崩落させてしまうなどの危険があります。安全性が何より重要で、現地の代理店の助けを借りながら綿密にルート選定を行うことで、それも何とか乗り切ったのでした。

中国とカザフスタンの国境でトレーラーに積みかえられた重機
隣国との交易路としても重要な交通路に架かる橋。早急な工事を必要としていた

入念な準備をしたにも関わらず、現場には全く話が通っていなかった…

そして今回の最大の難関となったのが、帰りの“梱包”でした。

重機はリース品であり、1日あたり膨大なリース代がかかるため、工事を終えた後は、一刻も早く日本に戻す必要がありました。ところがキルギスは農業国であり、そうした機械を輸出する産業が発達していません。したがって、重機を梱包してコンテナに詰めるリソースがきちんとあるのか、非常に心配でした。

それならばもう現地へ行ってしまった方が早いと、輸送を始める前に私たちはキルギスに赴き、梱包やバンニングを行う施設や、クレーンやフォークリフトなどの機材、梱包に必要な木材などの資材がきちんとあるか念入りに確認。結果、これなら大丈夫だと見込みがついたので、いざ今回の輸送を開始したのでした。

ところが、重機の使用が終了し、いざ梱包・バンニングの指導や確認のために再度現地に赴くと…。

作業場所は勝手に移され、かつ作業機材も梱包資材もほぼ何もない。梱包を始める気配すら全くない。あれだけ現地の代理店に入念に説明し、すべて問題なく対応できると確認を取ったにも関わらず、現場に全く話が通っていなかったのです。

そもそも梱包をするしない以前に、現地の人たちはこうした経験が全くなく、輸送のために梱包し、コンテナに積み込むという概念自体を理解していないようでした。だから、基本的に悪気は一切ありません(笑)。途上国での案件にいろいろ関わってきた私も、このレベルの行き違いは初めてでした。

これはまずいと、私たちは直ちに木材を発注し、他の資材も現地のホームセンターで買い集めます。あわせて、作業員たちに梱包の意味やバンニング方法を手取り足取り教えながら、作業を始めてもらいます。

翻訳アプリも駆使しながらひっ迫した状況を切々と伝えたところ、彼らもだんだんと気持ちを共有してくれ、最終的には早朝から夜遅くまで懸命に働いてくれました。

現地スタッフとともに、重機のバンニングに奔走

なじみのない場所の仕事でも“できない”と壁を作らず、何とかやれる方法を探す

そうして数日後、何とかバンニングを終え、日本に向けて送り出すことに成功。予定よりは遅延してしまいましたが、それもお客様に納得いただける範囲に収まり、同案件は遂に完了したのでした。

大変ではありましたが、最終的にキルギスの人たちと、心で通じ合うことができました。結果、インフラの整わない中で生活するキルギスの方々の物流や日々の生活に、ODA事業を通して資することができた。それにより、彼ら彼女らの笑顔を増やせたのかなと思うと、感動を覚えました。

また、そうした“橋渡し”が実現できたのは、当社のさまざまな部署の協力があったからこそです。無理難題の数々にも、仲間たちがきっちり応えてくれて、それが大きな力となりました。日新の強みは、お客さまへ親身に寄り添いながら、輸送の全工程をフルサポートできる点にあります。それも、こうした各部署や当社現地法人、代理店との強固な連携があるからできるのだと、あらためて実感しました。

私はなじみのない場所でのODA支援に携わることが多いからこそ、最初から“それは無理です”と壁を作るのではなく、お客さまや現場に寄り添いながら何とかやれる方法を探すよう心がけています。そうするうちに、関わる人たちが一体となり、何とか難題をクリアできる。今後もそのプロセスを大切にしながら、難しいミッションにも立ち向かっていきます。

3,000メートル級の山々を超えて目的地へ
お客様のニーズに合った最適な輸送ルートや輸送方法、保管、引越のご提案をいたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。担当営業より詳しくご説明させていただきます。