南米・マチュピチュへ数々の難関を乗り越え、世界初の4K生中継成功をアシスト

PROJECT STORY 02

PROJECT MEMBER

営業

不破　淳

（フワ　ジュン）

執行役員　東京航空第一部長（取材当時）

営業

永山　悠理

（ナガヤマ　ユウリ）

東京航空第一部　第一課（取材当時）

クライアントとタッグを組み、この難題に挑む

海外150カ所以上の拠点・ネットワークを持ち、多様な貨物を安全かつ正確に届ける国際輸送サービスを手掛ける日新。珍しい案件の一つとして、TV番組制作プロジェクト輸送がある。海外ロケのドキュメンタリー番組は我々にとって馴染みのあるものだが、このようなところにも日新が関わっている。テレビからはうかがい知れないその裏側に、もう一つのドラマがあった。

2018年、ジャカルタ・アジア大会向けの放送機材往復輸送を日新が手掛けたことを契機に、TV局から大型プロジェクトのオファーが舞い込んだ。2019年6月に南米ペルーの世界遺産・マチュピチュ遺跡から、世界初の超高精細4Kによる生中継を行うための放送機材の往復運搬である。日本からペルーまでは飛行機でおよそ25時間、そしてクスコ市街から列車で4時間かけて100km先のマチュピチュ村へ。さらに、尾根にある遺跡までの山道を進む。移動手段が限られる中、撮影に使う機材は700品目以上－大型木箱にして20個－重量にして8tにもなる大きさの貨物を、“世界初”かつ“生放送”という、ミスが許されない現場へ輸送する大型案件。その成功の裏には、乗り越えなければならない数々の難関が待ち受けていた。

初の海外現場挑戦、成功に向けてアプローチ

2019年1月、プロジェクト成功に向け、まずは執行役員東京航空第一部長の不破が過去に協業したチリの代理店へコンタクトを取り、ペルー現地業者の紹介を仰いだ。3月には実際に現地へ飛び、契約の締結や下見を行って輸送の土台を整えた。そして2019年4月、航空部の若手社員である永山を中心に輸送手配が始まった。国内での輸出通関と航空輸送手配、現地代理店と連携してペルーでの輸出入通関、空港とクスコ市倉庫への国内輸送、さらに倉庫の確保や復路の手配を行う。加えてクスコ市内での開梱包作業や鉄道貨車積み下ろし、クスコ市からマチュピチュ村内への輸送、村から遺跡までの山道輸送は現地の物流会社に協力を依頼した。山のような輸送手配を進めると同時に、現地での作業工程や予想されるトラブルに備えて複数の作業シナリオを作成し、手筈を整えた。

不破: 「今回ペルーの人たちとの仕事は初めてだったため、国民性を知るように努力し、サポートを依頼する際は相手が気持ちよく引き受けてくれるように気を配りました。現地の人たちはスペイン語しか話すことができなかったため、お互いのことを理解するのに時間がかかりましたが、メキシコ日新の駐在員の協力もあり無事に受注に至りました。」

永山: 「当時、ペルーに今回のような業務を対応できる代理店との契約が無く、クライアント経由で紹介を受けた代理店に作業を依頼しました。これまで全くやり取りのなかった中でプロジェクトの協力を依頼しなければならず、とても苦労しました。また現地業者への依頼は日新から行うこととなり、時差や現地事情がつかめない中、トラックの手配や列車を確保するのがとても難しかったのを覚えています。」

「代理店と連携して作業を進める中で、ペルーでは国の事情から、電波分野に関わる輸送には厳しい制約があること知ったため、通関書類の作成には念入りに準備しました。700個以上ある部品がひとつひとつ細かくチェックされるため、通関手続きにかなりの時間がかかったことを覚えています。また、スケジューリングには注意していたものの、一部書類の内容に不足があり通関が止まってしまうことがあったため、急ぎ書類を追加し、予定ギリギリで出荷しました。」

「想定外」の連続、的確な判断で一丸となって難関を突破

国際輸送では、想定外の事態がよく起こる。

永山も現地へ飛び、輸送立会いをしている中、一部貨物に通関遅延が発生。クスコで手配していた鉄道貨車に間に合わず、当初のスケジュール通りに運ぶことができなくなってしまった。そこで、共に現地入りしていたメキシコ日新駐在員と共にペルー鉄道と交渉し、特例で手荷物を大幅に持ち込みができるように再調整。大幅に遅延することなく貨物を輸送できた。

しかし、困難は続く。マチュピチュ村から遺跡までの運搬に村に2台にしかないトラックを手配していたが、貨車から積み込み場所までは100m以上の距離がある。駅作業員の協力も得ながら人海戦術で機材を手作業で運んだ。

さらに、村から遺跡までは車で30分ほど離れており、トラックでつづら折りの険しい山道を登る必要がある。そこで、無線機で位置情報を確認しながら、安全かつ慎重に山道を6回程上り下りし、機材を無事搬入。しかし、撮影場所では人手が足りず、監督・立会関係なく、全員で協力して大事な機材を持って奔走し、見事、世界初の生中継を成功させることができた。

プロジェクトは終了、だがここは折り返し

無事に遺跡からの放送が終わり、ほっとしたのも束の間、息をつく間もなく撤収作業が待っていた。現地代理店が復路の手配は行うものの、往路の反省をふまえ、より入念に再輸出の準備を整えた。ところが、すべての準備が終わったところでクライアントから、リチウム電池をペルーに残し、別の取材に使いたいというリクエスト。すぐさま代理店と連携し事なきを得たが、最後の最後まで気の抜けないプロジェクトとなった。

永山: 「本当にたくさんのトラブルがありました。無事生放送が実現し、日本にいる友人から実況や感想の連絡が届いたときは安堵したのと共に達成感を感じました。最後の山場である日本への再輸入が完了し、成田で貨物と“再会”したときの喜びは大きなものでした。」

不破: 「失敗が許されない責任の重い仕事の中で、上司や同僚の経験談で得た知識を活かし、日々変化していく状況をうまく読んで柔軟に対応してくれたことが、今回の成功の秘訣だったと思います。無事にプロジェクトが達成でき非常にうれしく思っています。」

前向きな気持ちと柔軟な対応力で業務を遂行

国内外で本プロジェクト全般の旗振り役を務めたのが海外の現場初体験となる永山と、これまでに数々の経験を積んできた執行役員として若手スタッフを鼓舞し続けた不破である。現地代理店とのメールでの交渉から、現地での機材輸送に直接寄り添った永山は、長くて短かった今回の任務を次のように振り返る。

永山: 「想定外の課題、要望が次々と出てきて何かと大変でしたが、どんなリクエストにも応える、失敗は許されないという前向きな強い気持ちで業務に取り組みました。クライアントも我々も複数のシナリオを準備しておきますが、それでも想定外の事が起こる。海外経験の豊富な同期に海外での行動や視察ポイントのアドバイスを受けたり、上司から他国での経験談等を色々聞いたりし、自分なりに柔軟なシナリオを用意しました。今回は最後まで気の抜けないミッションでしたが、無事生放送が実現し、日本にいる友人から実況と感想が届いた時は嬉しかった。また、撤収がすべて終了して山を下りる時、トラックの荷台から眺めたマチュピチュ遺跡は、心地よい風と相まってこれまでの疲れが癒されるようで最高の景色でした。それと、月並みながら、復路の輸送が完了し、成田空港で貨物と再会した時の達成感はやはり格別ですね。同じ木箱でも行きと帰りでは愛おしさが全く違ってきます。一つの目標に向かって大勢のスタッフが関わる本プロジェクトのような業務では、やはりコミュニケーションが重要です。現場はもちろん、メールでのやり取りも含め、色々な経験や価値観を持つ人と出会い、一緒に困難を乗り越えていくことで、知らず知らずのうちに成長している自分に気が付くと思います。」

形の見えない仕事を自分らしく可視化
最後までやりぬく強い意志が重要

一方、学生時代から航空輸送に興味を持ち、日新に入社して以来積極的に海外に出て経験値を高めてきた不破。海外渡航で数々の憂き目に遭いながらも、それをバネに成長してきた自らの経験を振り返りながら、次世代の後輩たちに熱いエールを送る。

不破: 「困難なタスクでも、まずはやってみる。簡単に諦めず、最後までやり抜くという強い意識を持った人の集まりが、日新の強みだと思います。業務の大半は、物凄いスピードで始まり、あっという間に終わってしまう。そうした中にあって、サービスや梱包など、形の見え難い仕事を自分らしく可視化し、クライアントに喜んでいただこうという意識を持てるかどうかで、個々の成長の度合いが違ってくるはずです。私自身、外国語で痛い目に遭った経験は多い。それでもめげずに続けてきたことで、仕事に対する面白さを深く実感できるようになりました。学生の皆さんには、語学力だったり、海外経験だったり、個人の持っている様々な能力をあらゆる場面で活用していただきたい。海外の人にも人見知りせず、積極的に輪の中に入ってコミュニケーションを図ろうとする。そんな物怖じしない人がこの業界には向いている気がします。」